こんにちは。
女性障害者専門 総合「性」サービス TiME(タイム) オーナー 二ノ宮 です。
「フェムテック」という言葉は
ここ数年でよく聞きくようになりましたね。
2021年の新語・流行語大賞にもノミネートされたこの「フェムテック」。
テレビのニュースなどで取り上げられることも増え、注目が集まってきています。
フェムテックは比較的新しい概念で、その範囲は
妊娠
不妊
避妊
授乳
育児
生理用品
産後ケア
婦人科系疾患
セクシュアル・ウェルネス
など多岐にわたります。
・・・でもなんで今になって注目されるようになったのでしょうか?
はいそうです!
恒例の疑問を解決したいので調べました!
「フェムテック」について色々載せておきますね!
<目次>
1.フェムテックとは
フェムテック(Femtech)とは、Female(女性)とTechnology(技術)をかけ合わせた造語であり、女性の健康課題をテクノロジーで解決へと導く製品やサービスを指します。
2013年頃、ドイツの月経管理アプリ「Clue(クルー)」の代表Ida Tin(アイダ・ティン)氏が自身のサービスのビジネスカテゴリを称するためにつくった言葉でとされてます。
比較的新しい概念であり、フェムテックとして確立された定義は存在していないものの、一般的には大きく分けて以下6つのジャンルに分類されます。
2.フェムテック6つのジャンル
月経 月経(生理)は約1か月周期で起こり、一般的に毎月3~5日間ほど続きます。 月経やその数日前から起こる月経前緊張症候群(PMS)や生理痛(月経痛)などで不調を感じる女性は少なくありません。 また、匂いやナプキンでのかぶれなどの不快感も感じやすく、月経期間は「ブルーデー」などと呼ばれたりもします。 ネガティブに捉えられがちな月経が少しでも快適になるよう、吸水タイプのショーツや肌にやさしいナプキンなど様々なフェムテック商品が登場しています。
不妊・妊活 不妊とは、妊娠・出産を希望しているにも関わらず、一定期間妊娠しないものをいいます。 検査で妊娠しにくい原因が見つかった場合、不妊治療で妊娠・出産を目指します。 近年では、妊娠に関する知識を得たり、妊娠に向けて体調管理を心掛けたりする「妊活」もクローズアップされています。 ただ、仕事との両立がしづらかったり医療費が高額になってしまったりといった問題点も。 こうした人達をサポートすべく支援セミナーや製品が増えつつあります。
ウェルネス(女性特有疾患) 男性にはない子宮や卵巣、乳房などにかかる病気を女性特有疾病と呼びます。 乳がんや子宮がん、 子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣腫瘍などがあります。
セクシャルウェルネス 2005年に世界保健機関(WHO)が策定した「性の健康と性の権利に関する仮定義」によると、性の健康=セクシュアルウェルネスとは、性に対して身体的、感情的、精神的、社会的に健康であることを指し、性の健康を維持するためには“喜び”も必要だとしています。 近年では、タブー視されていたこの分野への認識も変わりつつあり、セクシャルウェルネス市場は盛り上がりを見せています。 現在、女性向けのオシャレで最先端なプレジャーアイテムなど、様々なセクシュアルウェルネス商品・サービスが生まれています。
妊娠・産後 出産後は心身ともに何らかの不調を感じやすくなる時期。 産後ケア分野のフェムテックサービスとしては、オンラインで行う遠隔健康医療相談サービスや、海外では家事や仕事で忙しい女性が搾乳の時間を有効活用できるよう、従来の搾乳機をワイヤレス、小型化したウェアラブル搾乳機が販売されています。 また、ホルモンバランスが乱れやすい産後のママ向けのサプリメントや化粧品なども続々と開発されています
更年期 更年期とは、閉経前の5年間と閉経後の5年間とを併せた10年間のことです。 この時期は女性ホルモンのエストロゲンが大きくゆらぎながら低下していく影響もあり、イライラしたり冷えや肩こりなどで日常生活に影響が出る「更年期障害」と呼ばれる不調に悩まされる人もいます。 そんな中、頻尿や尿もれなどデリケート周りのお悩みをサポートするアイテムなど多彩なフェムテック商品が登場しています。
3.フェムテックの歴史
フェムテックの起源は1960年代に遡ります。
この時代はピル黎明期であり
マーガレット・サンガーの活動の歴史を経て
アメリカ食品医薬品局(FDA)によって
経口避妊薬(Enovid)が承認されて大きな反響を呼びました。
男性用のコンドームが製造されたのは100年以上前なので、
この時やっと女性が自分自身で避妊する技術を手に入れることができたのです。
しかし、女性の健康を改善するテクノロジーはなかなか発展しませんでした。
出産の可能性のある女性を臨床試験から除外する方針がとられたことも
研究が進まない要因となりました。
また、女性は医療に年間でおおよそ最大5000億ドル(約53兆円)を使っていると言われていますが、投資家は女性の健康問題を解決するプロダクトに関心がなかったのです。
男性向けの性に関する商品(バイアグラなど)は速やかに承認される一方で
女性の性はタブー視されていました。
そんな中
デンマーク出身の起業家イダ・ティン(英語版)を始めとする
女性イノベーターがフェムテックを普及させました。
イダ・ティンは生理トラッキングサービス「Clue」(英語版)を開発し
従来の女性らしさを象徴するピンクなどを使用しないデザインが好評となりました。
その後は急成長分野として注目を集め
フェムテックのベンチャーキャピタル資金調達額はどんどん増加し
2018年には6億2000万ドルを超えたことが報告され
2030年末までに少なくとも30億ドルに到達すると推測されています。
また、2025年には世界全体で5兆円規模の巨大な市場になると予想されています。
この成長の背景には「#MeToo」運動など
フェミニズムによって女性が声を上げやすくなったことも影響しています。
2020年は日本でも「フェムテック元年」と言われ
フェムテック市場の企業数は
2020年11月には97社にまで増加したと報告されています。
4.フェムテックの現在の動き
フェムテックのカバー領域は広いですが
主要なカテゴリとしては最初にも書きましたが
妊娠
不妊
月経
更年期
産後ケア
婦人科系疾患
セクシャルウェルネス
などが挙げられます。
サービス自体も幅広く
アプリケーションなどのソフトウェアから医療機器や製品
診断サービスなど多岐に渡っています。
例えば「妊娠」・「不妊」でいうと
オンラインでの不妊治療相談サービスや
自宅でできる妊孕(にんよう)力の検査キットなどがあります。
その一つが
米「KindBody(カインドボディ)」です。
2018年創業のミレニアル世代をターゲットにした不妊治療サービスで
移動式のポップアップカーで
AMH(アンチミューラリアンホルモン)検査を無料で受けられるほか
検査結果に応じて実店舗で有償のカウンセリングなどを受けることができます。
体外受精、卵子凍結、代理出産など
様々な不妊治療の選択肢を包括的に提供していますが
中枢となる卵子凍結においては
テクノロジーを活用することで運用コストを下げ
市場と比べ安価で提供しています。
企業への福利厚生としての導入も進めていますが
同社に限らず卵子凍結など不妊治療にまつわるサービスを
福利厚生として提供するサービスは増えています。
米フェイスブックやグーグル、アップルなども福利厚生として導入しています。
国内でも、同様の動きが出てきていおり
小田急電鉄や全日空、伊藤忠商事労働組合などが
福利厚生として導入しているのが
妊活コンシェルジュサービス「ファミワン」です。
「月経」の分野では
「ルナルナ」(エムティーアイが提供)のような月経管理アプリの他にも
米「Cora」など、素材やデザインにこだわった生理用品を届ける
サブスクリプションサービスや
ナプキン不要の吸水型サニタリーショーツを手がける「THINX」など
新しい生理用品を開発提供する企業も登場しています。
5.生理にもテクノロジーの恩恵
これまで生理だから仕方ないと諦めていた生理用品にも変化が訪れています。
例えば・・・
米FLEX(フレックス)は
新たな生理用品として
膣内に挿入し使用する月経ディスク「FLEX Disc」を開発販売しています。
膣内で経血を溜めることができるため
生理ナプキンによるムレなどを防げるほか
水泳などの運動時にも活用できます。
ゴム製の円盤にフィルムが貼られており
子宮頸部と恥骨にひっかけて装着し
フィルム部分に経血をタンポン3本分留めることができます。
一見硬い円盤型のディスクですが
体温で温めることで自分の膣の形に合わせてフィットします。
「FLEX Disc」のパッケージおよび製品外観(出所:FLEX)
そして、産後ケアで注目を集めているのは英国のElvie(エルビー)です。
2013年設立の同社は
骨盤底筋を鍛えるトレーニングデバイス「Elvie Trainer」と
ハンズフリーで搾乳できるサイレントウェアラブル搾乳器「Elvie Pump」を
開発販売しています。
Elvie Trainerには
膣内の圧力を感知するセンサーが内蔵されており
Bluetoothを通じて専用アプリケーションに自身の運動状況がトラッキングされます。
これまで可視化されてこなかった
膣内の圧力が把握できるほか
自身の状況に応じたトレーニングメニューが提案される仕組みです。
また
トレーニングを少しでも楽しくできるように
アプリデザインに加えて
トレーニング自体がゲーム感覚でできるようになっています。
自身の筋肉の締め具合に応じて画面上の宝石が持ち上がるというような具合です。
本デバイスは
英国の国民保険サービスであるNHSでも認可されており
同社は医療機関を含めた研究やマーケティングにも注力しています。
「Elvie Trainer」の商品画像(出所:Elvie)
Elvie Pumpは
ブラジャーにもおさまるコンパクトなウェアラブル搾乳機です。
静音かつ電動で搾乳してくれるだけでなく
アプリ連動で搾乳の強さをコントロールできるほか
搾乳量も確認、記録することができます。
「Elvie Pump」の商品画像(出所:Elvie)
6.なぜ今フェムテックなのか?
フェムテックの盛り上がりの背景には
「#MeToo」運動などをはじめとして
これまでタブー視されてきた女性が抱えていた課題や問題が可視化され
声を上げやすくなったということも影響しています。
これまで
確たる理由もなく「仕方がない」と諦めてしまっていた
女性にとって当たり前の権利を、女性自身が求めていいのだと・・・
テクノロジーの進化も追い風になっています。
センサーなどのテクノロジーを活用することで
これまで数値化されてこなかった
女性の身体的データを手軽に記録することが可能になりました。
それらのデータを基に研究することで
より多くの課題解決へと繋げることもできるでしょう。
今後、フェムテック企業と医療機関や研究機関との連携がより重要になってきます。
もちろん、データ取得における問題もあります。
フェムテックに限らず
身体的データ、とりわけ人に開示したくないデータをトラッキングすることは
データ流出や意図せず活用されるリスクもあるということです。
セキュリティをはじめ
消費者自身がデータに対するリテラシーを高める必要も出てくると思います。
7.女性の社会進出に寄与、男性や企業にも変化を促す
これらフェムテックの広がりは
女性の社会進出に大きく寄与します。
バイエル薬品の調査によると
月経困難症や月経前症候群(PMS)などよる経済的損失額は6828億円とされています。
フェムテックという言葉だけを聞くと
女性だけのものであると感じてしまうかもしれないがそうではありません。
例えば、生理があるのは女性だけではないと考えられてます。
心と体の性が異なるトランスジェンダーの人々や
自身の性が従来の文化に当てはまらないジェンダー・ノンコンフォーミングの人々など
「女性」ではない人にも生理はあります。
生理の期間、自分の性自認とは異なる違和感や不快感を身体にもつこともあります。
そのため、先述した生理ブランドなどは「生理がある全ての人へ」と謳っています。
妊活においても、女性だけの問題ではありません。
WHO(世界保健機関)によると
不妊の原因の約半数は男性にもあると言われています。
フェムテックが解決する課題は、決して女性だけのものではありません。
日本国内においては
ジェンダー・ギャップ指数が121位とまだまだ低い現状がありますが
性差なく暮らし、働くためには、女性の課題を個々人が解決するだけでなく
男性や企業側も理解する必要があります。
フェムテックが市場として広がり
女性が抱えてきた課題が認知されることは
性差の溝を埋め、結果として誰もが自分らしく生活する
社会の形成に寄与するはずと考えます。
8.今後の課題
一般に
健康保険業界での個人情報の扱いについては
米国ではHIPAA法で規制・管理されているわけです。
しかしフェムテックアプリなどは(医療業界や、他分野のアプリと同様に)ユーザーの個人情報を収集・蓄積するのだが、HIPAA法で管理されるわけではいません。
データプライバシー(information privacy)の状況は
ひとつひとつのフェムテックアプリごとに異なるので
利用者は、フェムテックアプリにいきなり個人情報を入力してしまう前に
それの「プライバシーポリシー」
つまり
「個人情報の扱いかたに関する方針」などを熟読して
そのアプリに自分のきわめて個人的な情報を
入力してよいものかそうでないかを判断したほうが良いです。
アプリのプライバシーポリシーは
それを開発・提供している会社ごとに異なっており
一方で個人データを売ったり貸したりはしない
と明記しているアプリ/会社もありますが
他方でそういうことを明言していない(あやしげな)アプリ/会社もあります。
日本では
近年登場した生理用品の多くは医薬品医療機器法の規定外の「雑品」として扱われ
品質基準がなく効能も示せていません。
こうした事態を打破しようと
2020年10月に野田聖子を会長
宮路拓馬を事務局長とする
「フェムテック振興議員連盟」が発足し
商品・サービスの質や安全性の基準を示せるよう
厚生労働省や関連企業と協力して審査基準を設けることを目指して動いています。
9.最後に
今回調べて載せたものは
ほんの一部に過ぎません。
多くの方にフェムテック・フェムケア関連製品を知っていただき
世の中の女性の悩みへの理解、サポートを促進し
女性の健康と活躍をサポートする社会の実現に貢献できるよう
私達はこれからも日々勉強し
より良いサービスを提供できるよう努めていきます。
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